
先週から住宅の新築工事が始まった。
約一年間掛けて、繰り返し打ち合わせをしてきた
クライアントの住宅だ。
”やっと着工だ”という安堵と、
”ここからが大事だ”という緊張が、
体の中を巡る毎日。
それでも、この”時”というものを迎えられているのは
素直にうれしい。
起業した当初は、たいして仕事の当ても無く、
”己が目指す建築を”との想いだけで
不安と期待の日々を過ごしていた。
今はそんな想いに耽る暇もないほど忙しく、
机の上に山積みになった仕事を抱えながら
充実した毎日を過ごしている。
”仕事がある”
それは本当にありがたいことなのだと実感している。

そんな忙しい日々の中でも、心掛けている事がある。
それは”仕事を上手くこなす”ということを
”しない”ということ。
”効率の悪い仕事”は嫌いだ。
”上手いことこなす仕事”はもっと嫌いだ。
それは職人時代に先輩から言われた
”ある言葉”があるからだ
大工として現場で働いていた僕。
はっきり言うが、手先は割と器用な方だ。
子供のころから物作りが好きだったこともあり、
物作りの段取りを考えるのも大好きで、
先輩から言われた仕事は、それなりに出来た方だった。

大きな失敗も無く、仕事をそつなくこなす自分に、
”俺って結構仕事出来るかも!”なんて思っていたそんな時、
先輩がこう言ってきた。
”良い仕事”は良い結果に繋がる。
”悪い仕事”は悪い結果にしか成らない。
”それなりの仕事”はそれなりの結果になる。
で、お前はそれなりでいいの?
衝撃的だった。
なんとなく出来てはいるが、突き詰めてはいない。
その程度の仕事に満足してしまっている。
そんな僕の気持ちを見透かされたような、
先輩からの、ありがたく深く厳しい言葉だった。
”それなりの仕事”
僕が子供のころから追い求めていた大工という仕事は
そんなものじゃない。
そうは思っていても、自分が施した仕事を改めて見返すと
それなりの物がそれなりの完成度でそこにあった。
悔しくて、情けなくて、恥ずかしくて
なにより、建て主に申し訳なくて・・・。

怒るわけでも、怒鳴るわけでもなく、
淡々と告げられたあの言葉。
職人稼業から離れ、設計士となった今でも
忘れることなく、僕の中に深く刻み込まれている。
仕事が忙しくなるほど、
”全力を尽くす”ということを忘れないよう、
その言葉を何度も自分に言い聞かせる。
そう、それが僕の”仕事への向き合い方”
山積みの仕事を目の前にして、
少し気持ちが焦っていたようなので、
自分を落ち着かせるために、改めて文字にしてみた。
・・・。ということで、頑張りますかぁ!(笑)