4月20日はノエルの誕生日である。

僕ら夫婦は、今日と言う日を深い喜びと共に迎えている。

実はノエルは今、大きな病気と闘っているのだ。

 

昨年末、ノエルが体調を崩しはじめ、

一向に回復が見られないため、

年明けを待って、

掛り付けの動物病院で検査してもらうことに。

 

その結果、彼の腸の付け根部分に腫瘍が見つかった。

 

そして医師から「このままであれば、早くて1ヶ月です」と

突然、ノエルの”寿命”が告げられた。

少しの驚きと、胸の奥からなんとも形容しがたい感情が

込み上げてきたのを今でも覚えている。

 

医師から様々な治療方法の説明を受けた後、

すぐには結論出さず、

夫婦でしっかりと話し合うことにした。

 

家に帰ってきてすぐ、ノエルを抱きしめながら

二人で泣いた。

僕の腕の中で、笑顔を見せてくれるノエルが

愛しくて、苦しくて、たまらなかった。

 

泣きながら”私が代わってあげたい”と妻が言った。

僕も心からそう思った。

でも、その思いにとらわれることが

何の意味も無いということも、頭のどこかで分かっている。

 

”この温もりが、消えてしまうかもしれない”

 

受け入れがたいこの事実に、どう向き合うべきか

二人で話し合った結果、

腫瘍の摘出手術を受けることにした。

年齢的にも決してリスクは少なくないが、

食事が上手く摂れなくなってきている今、

体力があるうちに手術をした方が良いのでは・・・。

というのが僕らが出した結論である。

 

手術に向けて、数日病院に通いながら

体調を出来るだけ整え、1月14日に手術を行った。

 

腫瘍の大きさは4~5cm。

その他にも、数ヶ所炎症した部分が診られ、

トータル30cm程度の腸管を摘出する大きな手術となった。

 

手術は成功。

術後の経過も順調だった。

摘出した腫瘍は病理検査を行うことに。

そして、ノエルは退院する時、その結果が出た。

 

結果は”悪性リンパ腫消化器型T細胞性”

それは僕らが聞いていた中でも、最悪の結果だった。

 

手術は成功したが、今のまま何もしなければもって2~3ヶ月。

抗癌剤の効果も出難いタイプらしいが、

いくつか種類があるので、体力が有るうちに

僅かな可能性に賭けることに。

 

こうして1月末から、3週間に一度の抗癌剤治療が始まった。

 

最初は”ロムスチン”という錠剤タイプの抗癌剤を処方された。

比較的、副作用も出難くノエルへの負担も少ないとのこと。

細かく血液検査を行い、状態を見ながらの治療。

いくつか気になる数値はあるが、治療は順調に進んでいる・・・。

と思っていた。

 

しかし4月初めから、再び嘔吐下痢を繰り返し

あらためて検査をしてみると、腸内に新たな病変が見つかった。

どうやら、抗癌剤の抑制効果より、病変の成長スピードの方が

上回ってしまったらしい。

 

現在は”ドキソルビシン”という抗癌剤を処方している。

点滴タイプで副作用が出やすい。

毒性も強いため針がずれないよう、30分くらいは抑えつけられながら

投与していかなければならない。

 

その姿を想像するだけで、胸が締め付けられる。

そして副作用でぐったりするノエルを見て、

”これで良いのか”と自問自答を繰り返してしまう。

それでもノエルは、僕らに笑顔を見せてくれる。

その笑顔に僕らが救われている。

 

”ノエルが頑張ってくれている”

僕ら”親”としてそれに全力で応えなければならない。

そんな思いを抱えながら過ごした4ヶ月間だった。

 

今でも思う。

”代わってあげたい”と

今でも思う。

”病魔はなぜノエルを選んだのか”と

今日11歳の誕生を迎えたノエル。

ありがとう。

今、そばにいてくれてありがとう。

 

必ず君を助けるよ。

君は僕らの”宝”だから。

大切な大切な”息子”だから。

 

これからも共に生きよう。