約束のペン

このペンは、僕が建築士を志し、アルバイトをしながら

資格の勉強していたころの仲間からもらったもの。

 

子供の頃から『大工になる』ことが目標だった僕。

社会人になって、いろいろな事を経験して、

その目標が『設計士になる』に変わったのは26歳のころ。

貯金も無く、アルバイトをしながら、

資格を取得するための学校へ...。

 

このバイトがとにかく楽しかった。

僕はこっちの仕事のほうがむいているのでは?

と思うくらい楽しかった。

 

そこで大切な仲間も出来た。

勉強がうまく進まず、悩み、心に迷いが出たとき、

『あなたには目標がある』と、楽しい中にも、

やさしく、時には厳しく声をかけてくれる、

そんな仲間だった。

 

そうして一年半、建築士の資格を取得し、

設計事務所への就職も決まった時、

その仲間達が、僕にペンをプレゼントしてくれた。

 

『設計士になるなら、これくらいのペンは持ってないと!』

と言いながら差し出されたペン。

僕も『まともな設計士なったら使わせてもらうわ(笑)』

『独立した時かなぁ(笑)』と照れ隠しで言いながら、

このペンを受け取った。

 

あれから13年。

何度か使うチャンスはあった。

もう使おうかとも思った。

でも、『独立したら...。』と何気に伝えた言葉が、

とても大切な約束のように、

心のどこかにいつも引っ掛かっていて、

使えずにいた。

 

この度、僕は独立し、アーキテクトノエルという、

会社を立ち上げます。

あの時の約束をやっと果たせる。

そしてやっと始めることができる。

 

” あの時の仲間へ ”

今日、会社設立のための大切な書類を書きました。

もちろん あのペンを使って。

本当に良いペンだったよ。

これからも、なにか大切な決断をするとき、

このペンを使わせてもらうね。

ありがとう。

稲村 哲彦。

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