設計の依頼を受けて、プランニングを進めていく上で、
僕なりにこだわっていることがある。
それは、初回のプランは必ず手書きで行うということ。
以前にも書いたことがあるが、
間取りだけなら、パソコンのフリーソフトを使って、
ある程度の設定をしておけば、
平面図を画くだけで、
基本的な図面が自動で描き上がる、
便利なCAD(作図ソフト)もたくさんある。
僕もこれまで何度か、初めからCADを使って
画いたことがあるが、これがどうも好きになれない。
どうしてもそのプランに対する発想が乏しくなってしまうのだ。
それはなぜなのか?と考えてみた。
確かに近年のCADには、さまざまな機能があり、
便利ではあるのだが、
なにか凝ったことを図面で表現しようと思うと、
どのCADソフトも、少し手間がかかる。
また、一部だけ修正したいと思っても、
各データの”互換性”というやつが邪魔をして、
簡単には行かないこともある。
表現したいことを理解して、そのCADを使うのであれば、
大した問題ではないが、初回となれば話は別。
思考を巡らせ、修正し、幾度も描き直し、
建物全体とピンポイントとの繋がりやその意味を
模索しながら進めていくのが、初回プランニング。
繰り返されるこの作業の中で、デジタルなものに依存すると、
表現しづらいことを自然と避け、表現しやすいもので
まとめようとしてしまう。
結果”一般的な建築”を基準に作られたCADが持つ、
与えられた”便利な機能”によって、
発想することに対して、見えない”枠”が出来てしまい、
そこから抜け出せなくなる。
それはクライアントにとって、決して良いことではない。
手書きであれば、それがない。
表現したいことは描けばいい。
変えたいところは消せばいい。
実に単純で自由な世界だ。
この”自由な立ち位置”に自分を置くことで、
そのプランの中に眠る”幸せの種”を見つけだすことが出来る。
そして”良い建築”に繋がっていく。
僕が設計し建物を生み出していく上で、
一番大変で一番楽しい時間。
”初回プランニング”
自由でなければもったいない。
これが僕の中で出た結論。
どんなに便利なものが出てきても、
ここだけは変わらないと思う。
それを続けていける設計士でありたいと思う。
鉛筆と消しゴム。万歳!